Something New ~日本語教師アシスタント奮闘記~ その1 - オーストラリアの特派員コラム - コラム一覧

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Something New ~日本語教師アシスタント奮闘記~ その1

~プロローグ1~

ボクは天高く突き抜ける白に近い蒼い空を見上げた。
真夏の燦々と降り注ぐ厳しい陽射しが体を痛めつけようとするが、異国の地の空気に触れ佇む自分を思うと力が漲るように居心地はよい。



2000年の8月、自分のイメージと掛け離れた川幅の狭いミシシッピー川に架かる橋の上にボクはいた。
ホテルからミネアポリスの中心地に辿り着くまで日本人旅行客などひとりとして見かけなかった。それもそのはず、この地は日本人には馴染みが薄い。
とにかく刺激的だった。
アメリカ大陸をさすらうことを詩にしたためた浜田省吾の「アメリカ」という曲が頭の中にリフレインしている。勢いでつい口ずさみたくなる。アメリカに来るのは二度目だが、パッケージ旅行のようにツアコンまかせで用意されたバスで移動でなく、自力で大地を踏みしめバスに乗ってここまでやってきたことなどこれまでにない。
このとき1年半後にオーストラリアにいることなど想像だにしなかった...。

オーストラリアコラム


おいおい、なんでアメリカなんだよと思われたかもしれないが、いったいどのような経緯でオーストラリアに行くことにしたのか、まず本題に入る前にプロローグとして述べておきたかったのだ。もう少しお付き合いいただきたい。まあ、経緯というよりは何にモチベートされたのかということなのだが...。
自分はこの頃、海外のコンピュータソフトウェアを日本用にカスタマイズして日本企業に販売する会社に在籍していた。この時期、激務を強いられていた。自分で云うのもなんだが八面六臂の忙しさで夏休みを取る暇がなかった。そこで上司の温情でインセンティブと称して、海外ソフトウェアの研修プログラムに送り出されたのだ。ただ英語を全く話せない自分だけが研修プログラムに出ても意味がないので、英語の堪能な同僚がトレーニングに帯同してくれるとのこと。
同僚の都合もあり、研修の始まる3日ほど前に自分だけ先乗りさせてもらったのだ。

成田から十何時間の長いフライトを終え、ミネソタのミネアポリス・アンド・セントポール国際空港に降り立ったときにはボクは疲弊しきっていた。長いフライトの上に、何かの研修旅行でやってきた子供の団体が騒ぎまくっていて眠るに眠れなかったのだ。引率している保護者の大人を一喝したかったがそういった気力も完全に失せてしまっていた。
入国審査の手前にあった大きなボードには、時の大統領であるクリントンの微笑を湛えた写真が掲げられて、下のほうには「ようこそアメリカ合衆国へ」と英語で記述されていた(英語はできなくても、これくらいは読める)。
しかし、その微笑が歓迎されているのではなく、まるでボクをあざ笑っているような気さえしていた。だから憔悴しているボクは微笑み返すこともできずにいた。逆に波乱含みの予感さえも頭に渦巻いてくる。

不安は的中した...。
果たして入国審査でたどたどしい英語を駆使して入国をパスすることができ、ホテルに行くためにシャトルバス乗り場へ向かった。観光地ではないのでまわりには日本人はひとりとしていない。不安がさらに水の波紋のように頭の中に広がっていく。
乗り場の近くにパネル台が設置されているのを発見。ホテルへの無料の直通電話のようだ。目的のホテルのボタンを押し(これもいちおう読める)、緊張するのを堪えて再度たどたどしい英語でしどろもどろになりながら、「空港にいるから迎えに来てほしい」、と電話口に出た女性に云った(そう伝えたつもりだった)。
しかし、三十分以上過ぎただろうか。待てど暮らせど、ホテルのシャトルバスはやってこない。いろいろなバスがひっきりなしに来ては帰っていく。中にゃ横にホテルの名前が書いていないのもある。もうすでに迎えに来て、戻ってしまったのかもという可能性も拭いきれない。妙に不快な汗が皮膚からどっと吹き出してきた。
うろちょろしているボクを心配してか、シャトル乗り場のトランシーバーを持った黒人の係員が自分に話しかけてくる。話す英語は早口すぎて解らないし、自分もうまく英語が組み立てられず会話は成立しない。あきらめ顔の係員はトランシーバーに何か告げると、首をかしげてボクから離れていった。もどかしさが募る。

時計を目を落してみた。かれこれ四十分は待っている。結局、仕方なくタクシーに乗ることにした。隣にあるタクシー乗り場に移動した(軟弱者めが...)。タクシー・ドライバーにホテル名と住所の印刷された紙を見せると頷いたので理解してくれたようだ。
運転席と後部座席の間には透明な間仕切りがあった。ミネアポリスは比較的治安がいいと訊いてはいたが、防犯目的のそれは犯罪の多いアメリカを象徴しているようだった。彼は自己防衛のために銃を所持しているかもしれない。ボクは少し怯えた。
映画「タクシードライバー」の主人公トラヴィスのように危ないヤツじゃないだろうなあ、といぶかしんでいると、
「どっから来たんだ?」と陽気に甲高い声の彼は訊いてきた。
シドロモドロになりながらボクは、
「日本からさ。少し時差ぼけだよ」
なんとか覚えたての単語(時差ぼけ='Jet lag')使って云ってみる。
運転手はケタケタ笑っている。少し安堵した。だが、それ以上は相も変わらず会話は不成立。
気だるさ100%の物憂げなボクは車窓に目を移した。色とりどりの様々な看板が目に飛びこんでくる。明らかに日本と違った風景。やっと異国の地に来たのだと初めて実感した。外国は初めてというわけではないのにも拘わらずだ。地に足がついていないが如く心は浮き浮きドキドキの複雑な気分だった。
なんとか、ホテルに到着。結局10分強のドライブだった。トホホ...。

オーストラリアコラム

プロローグ2に続く。。。
(文・菅 雅壱)
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