Something New ~日本語教師アシスタント奮闘記~ その4 - オーストラリアの特派員コラム - コラム一覧

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Something New ~日本語教師アシスタント奮闘記~ その4

やっとオーストラリア編に突入!!

2002年1月28日(月)の朝8:00。
初めてのオーストラリア。初めての南半球上陸だ。
眠い目をこすりながらシドニーの国際空港に降り立った。時差は2時間ほどだが、エコノミー症候群に陥らないまでもさすがに機内泊はつらい。熟睡などできるはずもない。
季節は日本とは真逆で本格的な夏に突入する。日本では昨日からっと晴れたものの、一昨日には雪がぱらついていた。こんな極端な温度の違いを経験したことは初めてで、アメリカのときの時差ぼけ以上の衝撃を受けないほうがどうかしている。不思議な感覚だ。恐らくこれから出会うもの、見聞きするもの、全てのことが初めて尽くしになることだろう。そう考えると、よく表現される期待と不安が入り混じった心持ちになってくるというものだ。


オーストラリアコラム


27日(日)の関東地方は天気予報がいい意味で裏切ってくれて雪は降らず晴。
風が強かったがボクの門出を祝ってくれるような快晴だった。雪が降るだろうと早めに成田空港に着いてしまったボクは、見送りに来てくれた友人が気を利かしてくれ、別れの盃よろしく空港内のレストランで別れの宴を開いてくれた。もう向こうではめったに呑めなくなるだろうと、ボクは出発時間ギリギリまでしこたま日本酒を注入して日本とのしばしの別れを惜しんだ。ほどよく酔ったボクは数時間後、機上の人となった。
乗り込んだガンガルーマークのカンタス航空でまた酒を...という目論みもあったがさすがに手は出せなかった。成田を夜に出発して朝にはシドニーに着く予定だ。熟睡はできなかったが少しは眠っていたせいか9時間強のフライトはあっという間だった...。
しかしながら窮屈な飛行機から開放されたボクはほっとした。9時間という長丁場はやっぱり堪えた。そつなく税関を抜けたボクはルートバスに乗るために空港外に出た。9時間ぶりの娑婆の空気は気持ちいい。1年ほど前に台湾へ一人旅して予習済みのボクは、少々のことでは少しは物怖じしなくなっていた。慣れとは恐いものだ。
勤務先として決まっているダーウィン高校はその名もずばりダーウィンという場所にある。しかし、今ボクはシドニーにいる。なぜシドニーに来たかというと、今回のボランティア研修プログラムをコーディネイトしてくれたエージェントでの準備研修があるからだ。火曜日から金曜日まで4日間となる。4日間という短期間で学べることは少ないし、場慣れしたといってもほとんど英語などしゃべれやしない自分にとって藁をもすがりたい気持ちが先に立った。不安になっているのには他にも理由があった。ダーウィンでのホームスティ先、いわゆる住まいがまだ決まっていないのだ。

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そんな不安な気持ちを抱えながらボクは朝の陽射しを受けた。日本の何倍もの紫外線だというオーストラリアの太陽は眩しい。
ミネアポリスと違ってすぐに市内のホテルを通るルートバスは見つかった。料金は8オーストラリアドル。当時のレートに換算すると700円弱だ。
寝ぼけていたのか、ルートバスの運転手に先ほど両替した100ドル札を出してしまいそうになり慌ててすぐひっこめた。何より先にもこのオーストラリアの紙幣や硬貨に慣れることが先決だと悟った。
市内の「ロイヤル・ガーデン」というホテルに到着。古色蒼然たる佇まいで高級感とは程遠いが、どこか奥ゆかしさ溢れるホテルだ。そういったホテルも含めてこのあたりは静かなオフィス街といったエリアだ。
中は思ったより綺麗だった。時はもう10:00。14:00チェックインということになっていたが、早めにチェックインすることにした。
自分の部屋でちょっとした荷の整理をしてしばし休憩。だけど、好奇心の虫が騒がないわけはなく、ボクはシドニーの散策をすることにした。恒例行事みたいなものである。

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シドニーの街がボクを出迎えてくれた...。
さあ、探検開始だ。研修は明日からで今日はフリー。シドニーを満喫することにしよう。

散策を始めると、ここは多くのイギリス人が移住して成り立った国であることを実感する。所々に目につく看板のセンターという表記が「CENTER」でなくて「CENTRE」とイギリス英語だったりするのだ。
月曜日だというのに街は華やいで活気が溢れている。シネコン形式の映画館もあった。日本ではぼちぼち話題になっていたくらいだが、ちょうど「ロード・オブ・ザ・リング」が上映されていた。ここでは日本より映画が比較的早く公開される。映画は云うまでもなく字幕無し。いつか字幕無しで観ることができるだろうか...。
大通りを渡った先にはチャイナタウンがあり、街並みと歩く人種ががらりと変わった。ボクはランチを食べていないことに気がついた。ボクは時間が経つのを忘れるくらい、シドニーの街に心奪われ魅了されていた。
だいぶ遅めの昼食をどこかでとろうかと思い、チャイナタウンを歩いた。中華でもいいかもしれないなと思っていたが、なぜかふらっと回転寿司屋に入ってしまった。まだ日本に未練みたいなものが残っているのだろうか。
回転レーンには寿司の皿の載った小型の機関車と列車が走っているという見るもおかしなコンセプトの店だった。それに目を取られてしまったせいか、席に座ってしまったと思った。ここはチャイナタウンなのだ。であるからしてこの店の経営は中国人だ。実際食べてみると、案の定何百歩譲っても、お世辞としても、おいしくはない。それでも一縷の望みを託して、5皿ほど食しただろうか。食べなきゃよかった...。このなんちゃって寿司は酢も効いていない。なんともしょっぱくて切ない気持ちになった。味にではない。堂々と寿司屋の看板を掲げて、これを日本料理だと言い張る了見にだ。まさしく言葉どおり噴飯ものだった。
むなしくレーンの上を皿を載せた機関車が走っている。やり切れない後味の悪い思いをしつつこの回転寿司屋を後にした。でも救いだったのは、この一年後、再びシドニーの地を訪れたときこの店はなくなっていたことっだ。それはそうだ。このばかにした寿司とは呼べない代物は当然のこと淘汰されるべきだ。

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気を取り直したボクは、時間は早いがホテルの裏手にあるパブに入った。半分自棄気味だ。アルコールで帳消しをしたい気分もあった。
それに、オーストラリアのパブでビールを飲みたかったということもあった。プロローグでは触れていなかったのだが、ミネアポリスでは縁あってバーというよりパブに近い酒場に行く機会があって、是非オーストラリアに来た際には初日にパブデビューを飾りたかったのだ。
結構広く雰囲気がよかった。タスマニアタイガーの剥製(人形かもしれないが...)がカウンターの上にぶら下がっているという奇妙なパブだった。(回転寿司屋ほどではないが...)
イギリスの影響をもろ受けているオーストラリアのパブはキャッシュ・オン・デリバリー方式。後払いでなく、自分の飲みたい物をその場で払う方式なのだ。チャージ代はもちろんない。
「ビアー・プリーズ...」
ボクはカウンターのスツールに腰掛け、内側にいる若い店員の兄ちゃんに声を掛けた。種類はわからないがとりあえず生ビール一杯を頼むことにした。
「2ドル80セント」
という若い兄ちゃんの言葉を訊いて、ボクはぎこちなく財布を探った。やはり慣れていない。ボクは硬貨の山を手のひらに作って、そこから2ドル80セントを彼に取ってもらった。
ボクは驚いた。ジョッキに近いグラスには生ビールなみなみ注がれていた。日本円で220円ほど。そう考えると非常に安い。ボクにとっては天国みたいなところだ。
ますます気に入った。ボクはパブのとりこになっていた。
ゲンキンなもので、気をよくしたボクは、拙い英語で若い店員の兄ちゃんの暇を見計らって話しかけることを試みた。恐れ知らずだ。
気のいい兄ちゃんのようで、一生懸命さが伝わったのか、嫌な顔ひとつせず話に付き合ってくれる。
自分が日本人だと云うと話を合わせてくれて、日本のアニメの話になった。押井守のアニメ「ゴースト・イン・ザ・シェル(甲殻機動隊)」や「ドラゴン・ボール」が好きらしい。今時の若者らしかった。
このときは知らなかったが、20代前半の彼は少し離れたボンダイ・ビーチ近くに住んでいるのだという。酒の勢いも手伝っていたと思うが、ほとんど英語を話せない、それこそなんちゃって英語のボクでも少しはコミュニケーションがとれるということがわかった。
他愛のない話で盛り上がったが、パブは本当に天国だった。昼の回転寿司とは雲泥の差だ。
ボクは毎日通うことに決めた。一日の〆はここにすることに決めた。

シドニーの一日目は終わった...。
気持ちよく眠れ、明日からの研修も気持ちよく始められそうだ。



「Something New ~日本語教師アシスタント奮闘記~ その5」に続く。。。
(文・菅 雅壱)
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